Dr.インタビュー「そよう病院」

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山都町包括医療センター そよう病院 院長 水本誠一 先生インタビュー

今回訪れたのは、熊本県と宮崎県の県境に位置する“山都町包括医療センター そよう病院”。山の中の病院とは思えないほど、洗練された印象の建物は、設立から65年の節目となる平成24年11月に、病院名を改めるのと同時に、現在の場所に新築移転されたもの。赴任から7年目を迎えた院長の水本先生に“いまの地域医療の現状”や“そよう病院の役割”などについて、お話を伺いました。

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地域医療の現状について、
全国的な傾向を教えてください

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人々の医療に限らず、生活周辺、介護、家族関係の問題など、患者さんをトータルにみていく“地域包括医療”という言葉がありますが、つまりそれを行っていくのが“地域医療”だと私は考えます。その地域医療の現状はというと、全国的に医師や看護師などの人材不足が一番問題視されています。また医師に限っていえば、研修先が自由に選べるようになったことで、地方に残る人材が少なくなりましたね。特に、へき地など田舎の病院へ行く医師は決定的に少ない。その対策として、5~6年前から国が取り組んでいるのが“地域枠”という奨学金制度です。大学卒業後に、奨学金返還の代わりに9年間の地方勤務を行うというもので、その学生たちの地方勤務への期待が寄せられているところです。

そんな中、熊本県の現状や
課題について教えてください

熊本に限っていえば、医学部が地域にひとつしかありません。その熊本大学は、例えば内科ひとつとっても糖尿病を診る代謝内科、神経疾患を診る神経内科など、臓器別に細かく分かれ、深く掘り下げていこう、また世界を見据えた医療をやっていこうとする専門志向が強い大学です。ただ、私たちのように地域の医療に関わる医師は、最先端の医療というよりも、“common disease”、いわゆる頻度の多い疾患を広く診てあげて、それを少ない数の医師で診ることが求められます。総合医が地方には必要だけど、それを養成する環境が少ない。このことは、熊本に限らず、全国的にもみられる傾向です。そこで、総合医を増やそうと始まった動きが“総合診療専門医制度”と呼ばれるもので、これをきっかけに、5年後ぐらいには、へき地で働く医師が増えてくれればいいなと思いますね。

そよう病院を拠点とする地域医療の現状は、いかがですか?

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当院がある山都町は、まさに宮崎県との県境にあります。そのため患者さんの約3割が宮崎県の方なのですが、この県境にあることがときに問題となります。その顕著な例が、救急患者さんの搬送時。普段、宮崎から当院にお越しの患者さんであっても、救急車の要請をされた場合、県が違うので熊本からの出動ができないんです。これは、ドクターヘリも同じで、当院近くに住む五ヶ瀬の患者さんが、自宅から離れた宮崎市内の病院に運ばれてしまう。そうなると、家族がお見舞いに行く場合も負担になってしまうんですね。このことは、病院だけで解決できることではないので、非常に難しい問題です。 また、山都町は高齢化率が約40%と高く、県では二番目に多い地域になります。お年寄りが多い地域なのですが、意外にその世代の方は元気。自給自足をされているせいか、農作業しながら身体を動かし、長生きで健康に暮らしていらっしゃるお年寄りが多いですね。逆に、若い世代は一人一台車を持ち、どこへ行くにも車を使う生活が当たり前。肥満の若者が多く、糖尿病からくる慢性腎臓病や脳梗塞、くも膜下出血など肥満・高血圧に起因する病気が多いと感じます。

へき地医療拠点病院として、担っている役割は?

ひと口に、“へき地医療拠点病院”といっても、病院によって医師の数に違いがあります。例えば、上天草総合病院の場合は、20名ほどの医師がいらっしゃいますが、当院の場合は、私も含めて4名(2015年1月取材時点)。すべての医師が、さまざまな症例を診るというスタンスで診療を行っています。

へき地医療の魅力を感じるのは、どんなときですか?

お年寄りが多い地域なので、“古き良き日本人が多い”と感じますね。人柄もやさしく、ご近所や親せき付き合いなど、昔ながらの人と人とのつながりがしっかり残っている地域ですので、医師と患者の立場であっても、信頼関係が生まれやすい。その点は、なにかと同意書作成を要することが多い都会の医療とは違う、へき地ならではの魅力ではないでしょうか。ある医師から、“へき地の医療をやると人間がすてきになる”という話を聞いたことがあります。まさにそう。病院の横にある官舎には、野菜をはじめ、山の幸など季節の恵みがそっと差し入れされることもあり、人の温もりや田舎の食の豊かさを感じられる場所です。

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そよう病院の地域医療の取り組みについて教えてください

医療面はもちろんですが、介護や福祉などの連携も大きな仕事のひとつと考えます。当院の近くにある特別養護老人ホームへ、嘱託医として週に数回通っていますが、そこでも連携の必要性を感じていますし、この地域では、平成6年ぐらいから、医療や介護の現場に関わる人たちが月に1回連絡会を開き、患者さんの情報交換に努めています。また、当院では「北部へき地診療所」「緑川へき地診療所」「井無田へき地診療所」と3つの付帯施設を持っていますが、それぞれ決められた曜日に、医師と看護師、事務員が出向き、診療にあたっているほか、帰りにはその地域の在宅の患者さんのもとへ訪問診療にも訪れています。

今後、へき地医療の拠点として目指していかれることは?

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住民の方がいらっしゃる限り、最低限の医療を提供していきたいと思います。同時に、医療の拠点としてだけでなく、まちづくりの拠点でもありたいですね。新しく病院を移設するにあたり、病院内に売店を作りましたが、最近はコンビニエンスストアを入れる病院も多いんですね。そこを当院では、“地域活性化につなげたい”という思いで、地元の馬見原商店街の協力のもと、展開しています。きっとこの取り組みは、全国的にもはじめてのことではなかろうかと思うのですが、病院内で必要なものはもちろん、冷凍食材など、地域住民の生活に必要なものを販売しています。“病院づくりは、地域づくり”。共に盛り上げていきたいですね。

山都町包括医療センター そよう病院
所在地 〒861-3902 熊本県上益城郡山都町滝上476番地2
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TEL:0967-83-1122
FAX:0967-83-1124
http://soyo-hospital.blogspot.jp/
診療科目 内科、外科、小児外科、消化器外科、循環器内科、
整形外科、眼科、リハビリテーション科、呼吸器内科、
小児科、精神科、心療内科、歯科、歯科口腔外科
病床数57床
病院の特徴平成24年度に完成した新病院での医療に加え、へき地診療所での出張診療を行う山都町のへき地医療の拠点。養護老人ホームの診察など地域の包括医療も担っています。