Dr.インタビュー「産山診療所」

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産山村立産山村診療所 診療所長 林田来介 先生インタビュー

熊本県の“へき地医療”について具体的に知るために、今回、訪れたのは熊本県と大分県の県境に存在する“産山村診療所”。村唯一の医師として働く林田来介先生は、この地に赴任して5年目のベテラン医師。第一線で携わる林田先生から見た“へき地医療”の現状や先生の率直な思いを、ここではインタビュー形式でご紹介していきます。

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先生はどのような経緯で、
産山村診療所へ赴任されたのですか?

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私は平成20年より産山村診療所で医師として働いています。へき地医療に興味のあった私へ、知り合いから声がかかったんです。また、色んなタイミングも重なりましてね。実は私、長崎の島原市で17年間、開業医をしていたのですが、総合医である医師としてよりも先に、経営者でいなければならない自分に、行き詰まりを感じている頃でした。ちょうど3人の子供たちの独立に後押しされたこともあり、“産山村”という全く土地勘のない“へき地で医師になる”という、私と家内にとって、大きな決断をしました。

へき地医療に携わって
良かったと思う時は、どんな時ですか?

私の体力づくりもあるのですが、ミニバレーや太極拳サークルなどに入り、地域の人と交流を図ることを大切にしています。そんな架け橋を通して“医師”としてだけではなく、その地域の“住人”としてお付き合いができるところでしょうか。地域の皆さんは住民同士、親しくなることで、診療所へも足を運びやすくなる傾向があるようなんです。今では、採れたてのお野菜を持ってきてくれる患者さんもたくさんいますよ。

現場で働く医師として思う、
へき地医療の問題点を教えてください

いくつかあるのですが、一番に挙げたいのは“医療レベル”の問題。都市の医療の場合、周囲との競争が働くので必然的にレベルが上がってくるのですが、へき地の場合、競争以前にコメディカルスタッフも十分な人数を揃えられなかったり、薬局もなかったり…。限られた医療体制の中でどうやって“質”を確保していくかが問題だと思っています。

他病院とは、どういった連携体制が組まれていますか?

阿蘇市内でいうと阿蘇中央病院との連携のほか、救急の場合は熊本赤十字病院や済生会熊本病院などへ搬送しています。ドクターヘリを使って救急搬送する場合は、近くの「産山村グラウンド」をヘリポートとして活用。熊本市内の病院へ30分ほどで搬送できるので、急性期の患者さんの場合など、医師としてもありがたい体制です。ただ、悪天候の場合はヘリ運航を見合わせたりと、地理的な問題により全てが解決するわけではありません。私たちが携わる“へき地医療”はそういった体制に全てを頼るのではなく、あくまでも“救急の患者”にさせない体制をつくることが必要。そのための健診だったり、こまめに患者さんを診たりと“予防医療”の大切さを掲げています。バックアップのひとつとして月1回、高野病院からの支援を受けています。

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へき地医療ならではの患者さんへの接し方はありますか?

赴任して、最初にしなければならなかったことは“産山村に溶け込む”ということでした。そのひとつが先に述べたサークル活動。地元の人と触れ合い人間性を知ってもらうことも、診療所に足を運んでもらえるきっかけのひとつだったんです。また、病気の不安や親の介護、認知症など、他人にさらしたくない不安な気持ちを、他県から赴任してきて村の医師となった私に心を開いてくれるまでの道のりは時間がかかるもの。5年経ちましたが、まだまだ根気強くやっていくしかないと思っています。ただ、一度、信頼関係を築くことができれば、医師として格段に接しやすくなりますし、ここに行き着いた時が一番、やりがいを感じますね。

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今後の課題点を教えてください

ある程度、募集さえすれば、私のように今は“へき地でやってみたい”という医師が案外いるのではないかと思うんです。ただ、募集するとなれば、そこは医師が赴任した後の体制づくりがもっと必要。へき地医療の場合は、先に述べた“村に溶け込む”ことへの難しさがありますし、また、医療は、医師がひとりいれば、全て成立するものでもありません。赴任した医師が何を支えて欲しいのか理解し、その点をもっと地域が積極的にフォローすることで、私のように他県から赴任した医師であっても、早い段階からその環境に慣れることができると思うのです。私はというと、ご自身も経験があり、この立場を理解して下さる「熊本県へき地医療支援機構」の中本先生から、色々なサポートを頂戴しました。今後はこの“へき地医療支援機構”が“へき地医療”においてどのような役割を担っていくか、次のステップへ進むべく、熊本県として検討段階の時期にあるのではと思っています。

今後、取り組んでいきたいことを聞かせてください

産山村には「なでしこの里」という、地域密着型の老人福祉施設があるのですが、そこへ週一回、火曜日に往診に通っているのみで、訪問診療はやっていないんです。産山村には根づいていないと言った方がよいかも知れません。今、診療所へ訪れる患者さんの多くは70代~80代。在宅医療は開業医時代に積極的に行っていましたし、ここは高齢者が多くそれが最も必要な地域です。私は医師として、すぐにでも在宅医療に取り組んでいきたい気持ちがあります。医療を充実させていくことは、へき地に住む人の生活を守ること、そういった支援をし続けることが、集落の存続に繋がっていく…。へき地で働く医師として、そんな大きな役割を担っていることを自覚し、果たしていきたいですね。

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産山村診療所 林田来介先生の一日
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