鳥越俊太郎リポート リポート 第2回

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鳥越俊太郎 リポート 未来(あした)へ―。ともに歩む くまもと地域医療

“その人らしくいられる場所”を患者と家族を支える地域の連携

「どこに住んでいても、同じように医療や介護がうけられる」。切れ目のない医療を目指す熊本県の地域医療・在宅医療の今を、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんとともにリポートします。今回は、在宅医療を受けて1年余という玉名郡玉東町の西浦峯男さん(80)のお宅を訪ねました。  取材・文/坂本ミオ

かかりつけ医の訪問診療 看護師による訪問看護で

毎週月曜日の午前、公立玉名中央病院の訪問看護師・西原親(ちか)子さんが、西浦峯男さんの自宅を訪ねます。
西浦さんは3世代7人で暮らしています。一昨年、肺炎で公立玉名中央病院に入院。退院後も酸素療法が必要なため、かかりつけ医である安成医院の安成英文院長の訪問診療と、公立玉名中央病院の訪問看護ステーションから派遣される訪問看護師の定期訪問で、病状や体調のチェック、ケアがされています。

医の訪問診療 看護師による訪問看護
西浦峯男さん(右)に明るい笑顔で接する西原さん。「来てもらえるけん安心」と妻のヨシ子さん(左)

約1時間の訪問看護 リハビリに「気持ちよか」

約1時間の訪問看護
やさしく丁寧に背部マッサージ。右側の薬カレンダーは、お孫さんが用意してくれたそう。このカレンダーに1週間分の薬を入れ、「1日3回しっかり飲んでくださいね」と西原さん

「おはようございます」「奥さんも変わりありませんか」。西原さんの張りのある声が、西浦さんの家に響きます。足腰が痛むという妻のヨシ子さん(82)も気遣いながら、峯男さんの体温、血圧を測り、聴診器で胸や背中の音を聞き、呼吸介助のための背部マッサージへ。その間、おしゃべりを楽しむ雰囲気で、日常生活の様子や食事、睡眠の状態を本人や家族に尋ねます。呼吸リハビリを続けていると、峯男さんから「気持ちんよか。すーっとなる」の声が。
最後に服薬の状況を確認し、約1時間の訪問看護の終了です。

多職種間の連携で患者と家族をサポート

西原さんは、担当している方のご自宅を1日3~5件訪問。記録は訪問看護ステーションに残し、1カ月に1度、主治医に報告書と計画書を提出、情報を共有します。「もちろん少しでも気になることがあれば電話やメール、時には帰りに直接医師の元に行き、その場で指示してもらうこともあります」
出産・育児で6年間、現場から離れた後、訪問看護師として復職し、14年が経つという西原さん。「ご本人に気を配るのはもちろんですが、介護者であるご家族の表情、言葉などから、無理されていないかをくみ取り、お声をかけることも」。必要に応じて、ケアマネジャーにつなぎ、デイサービスやショートステイを利用してもらうよう勧めるなど「多職種間の連携が重要」と言います。「環境や病状によっては、病院や介護施設が良い場合もある。“その人らしくいられる場所”を大事にしたい」。そのための連携なのです。

多職種間の連携
安成先生の訪問診療に同行した鳥越さんの問いかけに「家が一番よか」と峯男さん

鳥越EYES在宅医療で暮らしに安心が

病気や体の衰えによって自分では病院に通えない、あるいは通うためのサポートが受けられない、という高齢者を医療から取り残さないため、在宅医療が果たす役割はとても大きいと思います。
今回、安成先生の訪問診療に同行し、「地域全体が病院で、家が病室。医師は病室を訪ねるように往診すればいい」という考え方があると聞きました。その実現に、地域でネットワークを作って取り組まれているそうです。他の地域にもこのような取り組みが広がるといいですね。
安心して暮らせる地域づくりが、医療、介護、福祉、行政などの連携によって進められている熊本。今後にも期待しています。

鳥越俊太郎 サイン

鳥越 俊太郎

1940年生まれ。福岡県吉井町 (現うきは市) 出身。88年4月から 『サンデー毎日』 編集長。89年の退職以降、テレビメディアに活動の場を移した。2005年、ステージ4の大腸がんが発覚。転移を経て4度の手術を経験しつつも、10年からの筋力トレーニングによってがん罹患前以上の健康を得て活躍中。