医師になる人へ、今伝えたい 熊本 医療の最前線。

医師になる人へ、今伝えたい 熊本 医療の最前線。 画像

熊本 医療の最前線

連携力に特化した「救急医療」や「地域医療」、地方では特にニーズの高まる「高齢者医療」と共に進化し続ける「最先端医療」。
そして一年半前に熊本に衝撃をもたらした震災では、今やどこにも負けない「災害医療」を築き上げるきっかけとなり、
県内でも強みを持って学べる医療は実に様々です。
初めて医師として現場に立ちキャリアの礎を築いていく、初期研修の2年間。今後進みたい道を模索する上でも、
また進路が決まっている人にとっても、「どこで、何を学ぶか」はとても重要な選択肢になるはずです。
熊本での初期研修があなたの医師人生の有意義な一歩になれますように。
ぜひじっくり読んで、参考にしてください。

熊本に学ぶ。 熊本で学ぶ。

経験を糧に築いたシステムは、
何よりの強みへ。

熊本で学ぶ 「災害医療」

熊本地震以前より、九州の災害医療の拠点
として構想されていた熊本県

近年、国内では自然災害が多く発生しています。大規模になると、複数の県にまたがるような広域的な災害も多く、その対応の必要性が認識される場面も少なくありません。今後も南海トラフ地震など、様々な自然災害が発生することが懸念されています。
そんな中でこの熊本県は、地理的に九州の中心部に位置することから、早くから「九州を支える広域防災拠点」という構想を策定していました。地理的な要因に加えて、人口あたりの病院数・病床数・医師数が全国でもトップクラスであること、さらには災害医療派遣の実績が豊富な日本赤十字社熊本県支部をはじめとした災害医療体制が充実していることも、熊本県が九州の災害医療の要となっている理由と言えます。そのため、平時の救急医療と並行して、災害医療についても行政を含めた県全体で推進してきました。
熊本地震の際も、こういった県としての基盤があったからこそ、迅速な対応ができたと言えます。

地震の経験を通して、県全体の病院で
災害医療へのノウハウを蓄積

熊本地震の際は、熊本県下のどの臨床研修病院においても、研修医がトリアージの現場に就いたり、避難所への回診に同行するなど、様々な形で災害医療の最前線に携わりました。特に1年目の研修医は、初期研修が始まってわずか1週間での経験でした。大変ハードな現場でしたが、そこから学んだことも多かったことと思います。熊本の臨床研修病院に所属する指導医や先輩医師たちも、その実体験を通して様々なことを研修医に伝えられるでしょう。
また、地震の教訓を生かして、熊本県下の病院は減災、災害対応などに力を入れて取り組んでいます。震災を経験した実体験から学ぶべきことはたくさんあります。

全国での支援の経験を元に、
災害対応に特化したワーキンググループや訓練が充実

そんな熊本県の基幹型臨床研修病院の一つである「熊本赤十字病院」は、県の基幹災害拠点病院であり、日本赤十字社の活動としても国内外の災害に多くの要員を派遣してきた実績を持っています。東日本大震災や熊本地震の際は研修医も救護班に帯同し、巡回診療、避難所訪問など様々な経験を積みました。
また、当院は災害派遣だけでなく、災害時の受入体制についても積極的な取組みを行っております。熊本地震以前より毎月、災害対応に関するワーキンググループを開催し、災害対応マニュアル・初動ポスター・アクションカードなどを整備。年6回の様々な災害訓練を行い、受入体制の構築に取り組んできました。こういった積み重ねがあったからこそ、熊本地震という想定外の場面でも、職員一丸となって臨機応変に対応できたと言えます。
さらに地震発生後は、震災での反省や課題を検討し、マニュアルを大幅に改定しました。改定マニュアルによる机上訓練、実際に救命救急センターで行われる実動訓練を実施し、PDCAサイクルを回し続けています。このように赤十字ならではの訓練や教育に触れ、経験することができるのは当院の特徴と言えるでしょう。
私たちは地震の経験を生かし、大きな糧として、今まで以上に災害医療提供体制の強化に取り組んでいます。地震を経験し、更なる成長を続ける熊本県で我々と一緒に「災害医療」を学びましょう!

熊本で学ぶ 「救急医療」

熊本市内と市外で、
それぞれ特徴的な救急医療体制を持つ熊本県

三次救急医療を担う熊本大学医学部附属病院および3つの救命救急センターがすべて熊本市内に位置するというのが、熊本県の救急医療の特性です。他にも熊本市内には多くの二次救急医療を担う病院があります。一方、熊本市外にはそれぞれの医療圏に中核となる二次救急医療を担う基幹病院があります。これらの病院はほぼ三次救急医療を担っているといってもよいくらいの医療を提供しています。地域の基幹病院で手に負えない患者様については、ドクターヘリと熊本県防災消防ヘリ「ひばり」の二機体制による熊本型ヘリ救急搬送体制などにより、熊本市内の三次救急医療施設へ転院し治療を行います。
熊本市内3病院の救命救急センターはいずれも年間1万台近くの救急車を受け入れ、豊富な救急診療を通して重症診療やトリアージ・初期診療、集中的治療などを研修できます。一方、熊本市内や地域の二次救急病院では、高次医療機関への転院の判断など三次救急医療施設では決して経験できない地域に密着した救急医療を学べます。
なかでも、「国立病院機構熊本医療センター」は、熊本市内にある救命救急センターの1つ。精神科病棟50床を有する県内唯一の救命救急センターであり、精神疾患を有する患者様の身体合併症の治療も担っています。病院全体の入院患者の約半数は救急外来からの入院で、どの診療科の研修中であっても救急患者の診療を研修することとなります。救急外来では救命救急医療だけでなく、病気やけがの内容に関わらず診療を行う総合診療まで非常に幅広く研鑽を積むことができます。
熊本県は決して大都会ではありませんが、医療のシステムや連携は全国的にも非常に先進的な地域です。これは、大学病院を中心とした熊本県内のすべての病院が熊本県民のために一生懸命取り組んできた成果でもあります。

熊本は救急対応のシステムが充実し、
救急疾患のバラエティも豊富

熊本県の救命救急センターは熊本市内に3施設あり、救急車搬送数は全国でもトップクラスです。ドクターヘリの基地病院は熊本赤十字病院ですが、救命救急センターをはじめ熊本大学医学部附属病院や地域の基幹病院へ搬送するなど、地域全体で役割を分担・連携しあいながら、熊本県の救急医療を守っています。急性期治療後の地域の病院への転院もスムーズで、医療機関同士の連携はかなり密だと思います。救急医療のシステムが整っているため、いわゆる「救急車のたらい回し」が少ない印象です。
このように熊本県全体での救急医療のシステムが整っており、それぞれの医療機関が果たす役割がはっきりしているので、所属する病院によって何を学べるのかが明確化しやすいのが特徴です。救急隊や連携医療機関ともストレスなくコミュニケーションがとれるのもメリットかと思われます。熊本県は東には九州山地、西には有明海、天草があり、登山による事故、海難事故など、様々な環境による救急疾患のバラエティにあふれているので、まんべんなく学ぶことができるのではないでしょうか。
救命救急センターを有する「済生会熊本病院」では、救急外来から入院治療まで一貫して学ぶことができます。豊富な指導医が在籍しており、研修医がいつでも相談できる環境を提供しています。経験しておくべき手技についても症例は豊富です。
救急の現場ではスピーディーな判断と、決断力が必要です。経験を積まなくては習得できない部分も多いので、症例が豊富にある熊本県での研修は非常に有意義になると思います。熊本地震により災害医療に対しても経験値が上がり、レベルアップしています。ぜひ熊本県で研修し、ともに救急医療を盛り上げていければ嬉しいです。

可能性を拡げ続ける
最先端の技術と連携力

熊本で学ぶ 「地域医療」

様々な形の地域医療が存在し
地域や行政との医療連携が現場で学べる

郷土愛が強く、医師数も全国平均より多い熊本県。熊本市を中心に各科専門医や都市部大病院と医療連携を図りつつ、熊本型ドクターヘリが地域の救急を結んでいます。各地域では地域に根付いた特色ある活動を行い地域に貢献。天草や人吉では地域完結型医療を提供し、住民のニーズに応えて地域の医療資源を守っています。各地域の社会背景として人口減少と少子高齢化は共通したテーマで、全人的診療の動きが進んでいます。
このように熊本県は「オール熊本」で地域医療を進めているため様々な地域医療について学べます。都市部、島や山間部、中小病院や診療所など、地域により必要とされる地域医療は異なります。各地域間で情報共有し診療協力体制を構築している現場で、地域医療を学ぶことができます。また、現時点で実際に人口減少と少子高齢化が進んでいる地域で、医療と保健(行政)、福祉の連携を比較的小さいコミュニティで学び、より大きなコミュニティに応用する能力をつける場として、熊本の地域医療を学ぶことが有効と考えます。
特に当院では、県境の地域完結型医療を学ぶ環境があります。人吉球磨地域と、宮崎県西部、鹿児島県北部から受診する住民を、特に救急外来と入院治療を通して接し、その他病院行事や地域イベントにも参加し地域を学びます。入院治療を通し、在宅へ調整した患者さんについては、退院後も訪問診療を経験することができ、地域の在宅医療や医療連携についても学ぶことができます。
都市部、盆地、山間部、島、医療資源が少ないところの地域医療など形は様々。熊本でそれぞれの地域の特徴を学び、地域住民に学び、地域に還元する医療を学ぶことで、医療人としてどの分野においても活躍できる人に成長できるはずです。

熊本で学ぶ 「最先端医療」

熊本県唯一の大学病院として全国でも
最先端を進む医療の研究と実践を経験できる

様々な役割を持つ医療機関が充実する熊本県ですが、当院は県下唯一の特定機能病院として、地域の医療機関との緊密なネットワークのもとに、難治性疾患の治療や臓器移植をはじめとする高度な医療の実践に取り組んでいます。最高レベルの医療を安全に提供するために、手術支援ロボットや新生児用救急車の導入、ハイブリッド手術室の設置など最先端の診療基盤を整備。さらに移植医療センターやがんセンター、高度医療開発センターなどのセンター化を図り、診療体制の強化を進めています。熊本県唯一の大学病院として様々な難病や疾患の研究・診療にも取り組んでおり、中には全国的に先んじて取り組む分野もあります。研修医は全国的にも稀な症例や治療にも触れることができるメリットがあると思います。
その一例として、当院では「アミロイドーシス診療センター」を設立し、全国に広く存在する様々な種類のアミロイドーシス患者をできる限り発見し、早期に有効な治療を開始するため、全国からの病型診断依頼を受け付けています。また、成人発症の生命予後不良な全身性アミロイドーシスである「遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス」に対して、アミロイドの原因となる異型トランスサイレチンの産生を抑制する核酸医薬(small interfering RNA)の臨床治験にも取り組んでいます。siRNAの投与により血液中のトランスサイレチン濃度を約80%低下させることが可能であり、疾患の進行を抑制する結果が得られています。
このように、県内はもとより全国から難しい症例が集まってくる環境の中で、日々進化する医療技術に触れ学ぶことが可能です。

少子高齢化の
これからを支える医療の現場

熊本で学ぶ 「高齢者医療」

熊本県の地方部では、
日本の「20年後」の高齢者医療を先んじて学べる

熊本県の高齢者人口は、全国と同様にますます増加している状況です。熊本県では、熊本市と熊本市以外の医療圏で、人口分布が大きく変わります。熊本市以外の地域では、現在、日本の20年後の人口分布と同様の高齢社会になっているといわれています。そのため、熊本市内と地域での医療を組み合わせて研修を行うことで、日本の「現在」と「未来」の両方の高齢者医療を学ぶことができる環境が、熊本県には整っているといえます。県内の基幹型病院のほとんどが外病院での研修もプログラムに入っているため、意識して計画を立てると良いでしょう。
そんな中、当院の医療圏における高齢者人口は、県全体よりも10%近く高く、まさに20年後の未来を経験できる状況です。診療現場では高齢者特有の内科系疾患や整形疾患、さらには高齢者への癌手術、化学療法も行っています。慢性疾患での入院に対しては在宅医療へのシフトも進められています。在宅療養支援病院・診療所で在宅医療を進めるのですが、この患者の通院や入院を24時間体制で支援するのが在宅療養後方支援病院です。熊本市のような大規模の医療圏では救急医療病院と後方支援病院は別々の病院が担当しますが、当院はその両方の機能を兼ね備えているため、総合的に症例を経験できる環境です。
高齢者医療は特別なものではなく、どの専門に進んでも必ず対応が必要な分野です。医師・看護師・薬剤師のみならず、リハビリテーション、栄養士、地域連携室など他職種の協力が必要な分野でもあります。いち早くリアルな現場で、そのような連携まで学ぶことが、今後の高齢社会にとって重要だと考えます。

熊本で学ぶ 「総合診療」

総合医療のニーズが高い熊本県で、
高齢社会を支える総合診療医を育成する

熊本県の総合診療を考える際、熊本市内と市外で医療体制が異なります。熊本市には超急性期を含めた急性期病院が多くあり、全ての急性期疾患に十分に対応できるキャパシティを有しています。そのため、総合診療の役割は各専門診療科の隙間の疾患を診ることが中心になります。また、各科にまたがる疾患について、全人的な対応を担うことになります。対して熊本市外の病院での総合診療は、超急性期の対応が必要となる脳・心臓疾患以外の全ての疾患(精神科も含む)に対応する必要があります。どこまで自分で対応できて、どこからは緊急的に熊本市内の病院まで患者移送をするべきか、その判断についても学べます。地域の医療体制を理解するという訓練も行うことが可能です。そのため、熊本市内・市外両方の地域で経験することで、より深く総合診療を学べる環境が整っているといえます。
熊本市内にある中規模病院である「くまもと森都総合病院」は在宅療養支援病院でもあるため、地域の在宅医療のバックベッドとして機能しているだけでなく、実際に一部の医師による訪問診療も行っています。また、病院総合医として、外科系入院患者の血糖コントロールなどの対応も行っています。熊本市の中心部における総合病院機能を有し、地域の医療機関と密に連携しながら総合診療の真髄を学ぶことができる環境です。
今後は日本の高齢化を考えると、内科の専門医を今の3分の1に減らし、総合診療医を増やすべきであると考えています。個人的には、中規模病院であれば内科の8割が総合診療医でよいとも感じています。総合診療のニーズが高い熊本で、ぜひ研修を頑張りましょう。