SCROLL
お問い合わせ熊本ではたらく、
総合診療医の姿。
疾患ではなく「患者と向き合う」ことを、大きなやりがいに
Generalist02
天草市立新和病院早川 香菜美 医師
プロフィール
熊本県熊本市出身。自治医科大学医学部医学科卒。熊本大学病院、熊本赤十字病院にて臨床研修の後、3年目に人吉医療センター、上天草総合病院、4〜5年目に天草市立河浦病院、6年目となる2021年4月より現在の天草市立新和病院に勤務。
天草市について
熊本県南西部にあり、天草上島・下島の一部と複数の島々からなる市。新和町は同市中心部の南側に接するエリア。
人口75,783人(2020年)、高齢化率40.90%(2020年、全国平均28.00%)。市内にある病院は14院、医院は53院、歯科は41院(2021年11月)。
※出典:日本医師会 地域医療情報サイト https://jmap.jp/
「地域に在る医師」となるために
01総合診療医を目指し始めた
きっかけは?
母が保健師で、小さい頃から私も母と同じ仕事に就きたいと思っていました。しかし、高校生になって本格的に進路を考え始めたとき、母からの「保健師や看護師は医師の指示のもとに動かなければならず、自分のしたいことをできないこともある。医師を目指したほうがいいのでは」とのアドバイスを受け、医学部を目指すことに。全国に視野を広げ様々な大学を検討する中で、自治医科大学という環境を魅力に感じて進学しました。
正直、大学に入学するまでは専門分野や地域医療のことは意識していませんでした。そんな私が総合診療医へと進んだのは、自治医科大学での学びの影響が大きかったと思います。「全人的資質を備えた総合医」の育成を教育方針としており、地域・へき地医療に特化し臨床実習を重視した学びの日々。同級生も地域医療への意識が高い人ばかりで、「自分もしっかりと地域に出て、診療をする」との思いが高まりました。そんな中、臨床研修医2年目の時に新専門医制度が始まり、総合診療専門医が新設されることに。その研修プログラムが「地域に出たい」という自分の意向と、自治医科大学で定められている9年間の地域医療従事にマッチしていたことから、迷いなく総合診療医へと歩みを進めました。
健康診断から慢性疾患診療、救急まで
02どのような地域で、
どのような診療を行っていますか?
私が勤める「新和病院」は、天草市新和町にある唯一の病院です。若い世代は、車で15分程で行ける天草市中心部の病院へ通院している人が多いため、当院では高齢者の診療が中心。外来診療では80〜90代の方がほとんどになります。その方々のかかりつけ医として慢性疾患の管理を行うほか、訪問診療、健康診断を通して病気の拾い上げや指導、さらに救急対応も行っています。救急医療では自院への入院加療が可能か、高次医療機関への搬送が必要かも判断します。
自院でどこまでできて、どこから、どの高次医療機関へ紹介するかの見極めは、悩ましいところです。地域ごとの医療資源の違いに加え、交通事情やご本人・ご家族の考えや生活背景も考慮する必要があるからです。そんなときに頼れるのが、天草地域の他医療機関とのつながりです。特に、高次医療機関である「天草地域医療センター」は以前研修をしていたことがあり、総合診療科の先生も働いていることから、いざというときにとても助けられています。
※2022年1月時点での内容です。
患者さんと向き合い、人と人との関係を育めるのが喜び
03総合診療医のやりがいは?
熊本市内の大きな病院での臨床研修時は、「病気と向き合っている」時間が長かったように感じる一方で、総合診療医として地域にいる今は「患者さんと向き合う」診療ができており、大きなやりがいを感じています。長くその地域にいる看護師さんの力を借りながら病歴や家庭背景を把握し、外来から入院、退院後の回復、リハビリまでずっと継続してその人を診ることができるのは、大きな魅力です。他の専門科であれば、患者さんが亡くなった時点で関係が終わってしまうことが多いですが、総合診療科の場合は残されたご家族や近所の方との関わりが続くことがよくあります。「最期を先生に看取ってもらってきっと幸せだった」と言っていただいたとき、誰かの幸せになれたことをとてもうれしく感じました。
また、新和町は誰もが知り合いの田舎町。「患者さんと医療者」だけでなく、同じ地域住民として関われることも面白く感じています。コロナ禍以前は、地域のお祭りに参加するなど地域活動にも参加させてもらっていました。
人脈を大切にすることが、大きな力に
04総合診療医に求められる力とは?
総合診療科は内科、救急、小児など様々な領域を診療しますが、全てに精通していないといけないと気負う必要はないと思います。なぜなら、全部を自分だけで行う必要はないからです。様々な領域についての知識は必要ですが、分からないことは、分かる人に相談すればいいのです。その時に力になるのは、学生時代や臨床研修医時代の友人、指導医の先生などとのつながりです。私自身も、自治医科大学の先輩や過去に天草地域の他院で研修したときの人脈を、大いに生かせています。
反対に、分からないことを調べる手段を持っておくこと、そして「すぐ調べる」という習慣を身に付けることが大切だと思います。「自分はこの分野しか診ない」というよりも、気になったことはどんな分野でも調べてしまうという人は、総合診療医に向いているように感じます。
総合診療を追求しつつ、専門分野も見つけていきたい
05今後の目標をお教えください。
地域で総合診療を行う上で実感しているのが、熊本県は医療の偏在が大きいということ。熊本市内は医療環境が充実していますが、熊本市外には不足している医療分野がたくさんあります。それをフォローするために総合診療医が必要とされているわけなのですが、一方で地域ごとの医療が弱い分野を補完できるような専門性も必要だと感じています。
そのため、ある程度、総合診療医としての経験を積んだら、何か1つ得意分野を作りたいなと思っています。今、特に興味を持っているのは、緩和ケアです。熊本市内には多くのホスピスが存在しますが、天草にホスピスはありません。しかし、これは専門性を持った医師がいれば、地域内でも完結できる分野です。「自分に任せてください」と自信をもって言えるものを習得し、より地域医療の充実に貢献し続けられる存在でいたいと思います。
医療者として働いていると忘れがちになってしまいますが、一般の人たちにとって「医者にかかる」というのは、非日常の経験です。その際に、疾患だけを診るのではなく、目の前の患者さんで家族、その方々が暮らしている地域まで目を向けられるような、広い視野をもった総合診療医を、多くの人に目指してほしいと思います。
LIFESTYLE
勤務日の1日の流れを教えてください。
午前・午後の手が空いたときに病棟回診をします。
住居は病院のすぐ隣にあるため、通勤時間は徒歩1分です!
当直はどのくらい?
ドクターが3人しかいないので、週の半分は当直です。
とはいえ、自宅に内線があるため、家で待機しながら当直をしています。
休日はどのように過ごしていますか?
自宅が病院のすぐ横という立地のため、オンオフのメリハリをしっかりつけるために、
休日は熊本市内の実家に帰ることが多いです。